2009年9月23日水曜日

徒然草 第150段

宮本輝の「約束の冬」を読みました。宮本輝は、大好きな作家の一人です。
この「約束の冬」に吉田兼好の「徒然草」の第150段を引用した会話があります。

まずは本文どおり。そしてその現代語訳。

能をつかむとする人、「よくせざらむほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得てさし出でたらんこそ、いと心にくからめ。」と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。いまだ堅固かたほなるより、上手の中にまじりて、毀り笑はるるにも恥ぢず、つれなくて過ぎて嗜む人、天性その骨なけれども、道になづまず、みだりにせずして年を送れば、堪能の嗜まざるよりは、終に上手の位にいたり、徳たけ、人に許されて、双なき名を得る事なり。天下のものの上手といへども、始めは不堪の聞えもあり、無下の瑕瑾もありき。されども、その人、道の掟正しく、これを重くして放埒せざれば、世の博士にて、万人の師となること、諸道かはるべからず。

<現代語訳>
芸能を身につけようとする人は、「よくできないような時期には、なまじっか人に知られまい。内々で、よく習得してから、人前に出て行くようなのこそ、まことに奥ゆかしいことだろう」と、いつも言うようであるが、このように言う人は、一芸も習得することができない。まだまったくの未熟なうちから、上手の中にまじって、けなされても笑われても恥ずかしいと思わずに、平然と押しとおして稽古に励む人は、生まれついてその天分がなくても、稽古の道にとどこおらず、勝手気ままにしないで、年月を過ごせば、芸は達者であっても芸道に励まない人よりは、最後には上手と言われる芸位に達して、人望も十分にそなわり、人に認められて、比類のない名声を得ることである。世に第一流といわれる一芸の達人といっても、初めは下手だという噂もあり、ひどい欠点もあったものである。けれども、その人が、芸道の規律を正しく守り、これを重視して、気ままにふるまうことがなければ、一世の模範となり、万人の師匠となることは、どの道でも、かわりのあるはずがない。


会計事務所に勤務し、もっと税務のことを勉強して自信をつけてからクライアントを担当するのがいいと考える主人公が、料理屋さんで友人と一緒に食事をしている時に、自分の仕事に対する自信のなさを話したところ、この友人が「徒然草」を引用し、主人公を励ます会話の一部です。

誰だって最初から自信満々で仕事ができている訳ではなく、いくら経験を積んでも自信というものが完全なものなることはないような気がします。

この会話を聞いていた料理屋のご主人の会話もなかなかです。
「料理には料理の基本があるんだ。包丁の握り方、素材への向き合い方、火加減・・・。
「芸道の規律正しく守り」ってところが大事なんだよ。だから師匠ってものが大切なんだ。そこんところを間違えなかったら、自分がまだ未熟だってことを卑下することなんかないんだぜ。恥をかいて、叱られて、悔しい思いをして、何事も一人前になっていくんだ。人に良く見られようとか、臆病な奴は、何事につけて、大成しねえ」
そして、この徒然草の話を聞かせてくれたこの二人に、鯛の刺身をご馳走するのです。

積極的に取り組む。それでいてその道の規律を正しく守る。
宮本輝の本には、生きていく上で、大切なことを教えてくれる「言葉」がいつも
あります。

2009年8月27日木曜日

儀式で感謝を表す

  ひろせ通信の巻頭に書いたものをブログで掲載させて頂きます。

以下「ひろせ通信」268号巻頭より

きつねと友達になりたい王子様が、きつねに聞きます。友達になるにはどうすればいいのかと。

「同じ時間に戻ってきたほうがよかったかもしれないね。」 ときつねは言いました。 

「例えば、もし君が午後4時に来るなら、3時からもう僕は幸せな気持ちになり始めるんだ。
時が進むにつれて僕はますます幸せを実感するし、4時になれば僕はもうすっかり君のことが
心配になって、それで頭がいっぱいになっちゃう。僕は幸せの対価をきっと見つけるよ。
でももし、君がいつでも来るなら、僕はいつ心の準備をしていいかわからなくなってしまうと思うんだ。
それには、儀式が必要だから。」

 「儀式って何?」 と王子様が尋ねると、

 「それは同じように、すっかり忘れさられたことだよ。」 ときつねは答えました。

 「それは、ある一日を他の日とは違う特別なものにする、ある1時間を他の時間とは
違う特別なものにすることなんだ。」

(サンテグジュペリ著「星の王子さま」)


医療機関のお客様の10周年記念に参加させて頂いた。偶然2週続けて別の医院のパーティ-がありました。多くの関係者が参加されていたのですが、どちらも患者さんを招待されていてその患者さんのスピ-チを聞くことができました。

お一人は開業以来医院の入口にお花を植えられその患者さんがずっとそのお花を見守られていて、それはその先生の何かお役に立てないかと思われずっと10年間継続されていることでした。提携されている病院のドクタ-が先生のファンだとも。もう一人の患者さんのスピ-チは、その先生の医院を「日本一の医院」と賞され、一生先生に面倒見て頂きたいとお話されていました。

そして、双方の先生がどちらも、現在の医院があるのは皆さんのおかげと感謝され、一方で患者さんも先生に本当に感謝されていました。

ある一時点の節目で「儀式」をもつことで、今までの感謝を伝え、そして今後も変わらぬサ-ビスを提供していこうとする決意を伝えていくことはとても大切なことなんだと改めて気付かされたような気がします。そして、感謝という気持ちは循環するものでまた自分自身に戻ってくるものだとも。

そういえば私達の事務所も今年の9月で35周年になります。特別な「儀式」を準備してはいないのですが、あらためて多くの関与先や提携先の皆様への感謝の気持ちを「儀式」として持ち続けて行きたいと考えます。

2009年8月17日月曜日

涙を「欠伸」で誤魔化す小学1年生

7歳の小学1年生のお話です。小学4年生・中学1年生の子供たちとトランプの7並べやババ抜き・ジジ抜きをして遊んでいるのを見ていました。始めて3回連続で小学1年生の子が負け、突然涙を目に浮かべテ-ブルに顔を埋めてしまいました。途中までいい勝負をしていたので勝てると思った気持ちがあったのと、3回連続で負けたことが悔しかったのだしょう。でもすぐに顔を上げて涙を拭き、「あくびをしたから」と自分が涙ぐんだ言い訳して4回目のトランプを始めました。

悔しい気持ちに涙を浮かべたことと涙ぐんだ自分を「あくび」で誤魔化した小学1年生。ちなみにこの小学1年生は私の甥ですが、何か大きな勇気を貰った気分でした。

生まれたばかりの時、弟の嫁から「全然(顔が)かわいくないんですよね。お兄さんの小さい時とそっくりなんです。」と何の悪気もなく言われたのを今も忘れません。あれから7年。君は確実に成長しています。

2009年6月9日火曜日

感動の授賞式

米テキサス州フォートワースで開かれた第13回バン・クライバーン国際ピアノコンクールで、盲目の日本人ピアニスト、辻井伸行さん(20)が優勝しました。19歳の中国人ピアニストと並んでの第1位。同コンクールでの日本人の優勝は初めてだそうです。
 音楽的素養がまったくない私には、辻井さんのピアノの本当の価値はわかりませんが、このコンク-ルの授賞の際のプレゼンタ-が辻井さんを抱きしめる姿を見て、いかに審査員をも感動させる演奏だったのかを知ることはできました。この授賞式のプレゼンタ-対して心から敬意を表したい気持ちです。プレゼンタ-の辻井さんに対する抱擁は、素直に見るものすべてに感動を与えてくれました。

2009年4月27日月曜日

ブログが新たな感謝を生む

 何人かの方からブログを書いていないことを責められ、「税務調査が多くてとか」「3月決算の新規関与先があって」などの言い訳をしていたのですが、あきらめて書くことにしました。本当に税務調査が多くて忙しい状況が続いたのですが、ブログを書いていたおかげでうれしいことがありました。

 ある関与先からの紹介で、訪問した新規のお客様が、ひろせのHPの私のブログを見て感涙されたと聞き(2週間ほど前のことですが)また継続しないといけないなと思っていました。このお客様は、私の親しい税理士からの紹介もあったためいろんな縁を感じていています。

いろんなお客様が、日々のひろせ税理士法人の仕事を評価して頂き、その結果新たにお知り合いのお客様をご紹介頂くことは、本当にうれしいことです。新たなお客様との出会いの中で、今のお客様に感謝することも忘れてはならないと感じています。

そして、自分の得意分野でない業種のお客様を私共の事務所に紹介して頂いた税理士にも感謝します。

最近仕事に追われて日々が過ぎていくことが多かったのですが、あらためていろんな方との縁に感謝した
1日でした。

2009年3月25日水曜日

税理の臨時増刊号が出た~



http://www.gyosei.co.jp/home/magazine/zeiri/zeiri_09031.html


「税理」の3月臨時増刊号にMMPGの複数の税理士で医療法人に関して
書かせて頂いたものが発刊されました。
確定申告の繁忙期に、事務所で誰にも知られずにひそかに執筆したものです。
主に社会医療法人について書かせて頂きました。あまり詳細には書けませんでしが、まずまずのできです。
手許にある方は是非読んでみて下さい。

2009年3月24日火曜日

アルバイトの学生

 昨年秋に二人の大学生をアルバイトで採用しました。この二人は
既に就職先が決まっていて、会計事務所で勉強したいとのことで半年間
勤務して頂くことになりました。二人ともこの不況のおり各々有名企業
の就職先も決まっていましたが、この確定申告が終わるまで本当によく
働いて頂きました。

昨日その一人が挨拶にお菓子と手紙を持って挨拶に来てくれました。

その中に
「皆さんから仕事に取り組む姿勢や周囲の人との接し方など多くの事を
学ばせて頂きました。」と書かれていました。
この二人は社会人となっても充分やっていけるだけの能力があり、各々
の会社で活躍されることを切に願っています。

「いまどきの学生」という言葉もありますが、「いまどきの学生」
から多くの事を学ばせて頂いたのは、私達だったのではと思います。

「若いというだけで可能性があり、私は君の可能性を信頼している。」
社会人となってすぐに関与先の方からかけて頂いた言葉が懐かしい。
とても不安だった私に、本当にやさしく接して頂いたこの関与先の方に
今でも心から感謝しています。
まだまだこの可能性を追求しないといけないと思っています。
自分のためでなく、こんな言葉をかけてくれた関与先の方々のために。